刑裁修習2
責任能力,裁判員裁判の合憲性に続いて,量刑関係で読んだものを。
<量刑の考え方>
・楡井英夫 「判解」『最高裁判所判例解説刑事篇(平成26年度)』
量刑判断において,行為責任主義の立場にたつことを宣言した判決
・原田國男「裁判員裁判における量刑傾向」慶應法学27号161頁
裁判員裁判がスタートして,一部の犯罪類型では,量刑傾向が変化したことを指摘している(例えば,性犯罪が重くなっていることなど)。
・原田國男「量刑論」法学教室418号34頁
・小池信太郎「量刑判断の在り方」刑法雑誌55巻2号346頁
上記平成26年判決と,裁判員裁判での死刑判決を控訴審が破棄して,無期懲役としたことを正当とした平成27年の最高裁判決2件等について,論じたもの。
<執行猶予>
・原田國男「執行猶予と幅の理論」慶應法学37号1頁
・樋口亮介「日本における執行猶予の選択基準」論究ジュリスト14号101頁
・小池信太郎「量刑理論からみた刑の執行猶予」刑法雑誌52巻2号243頁
日本では,多くの執行猶予の判決が,単純執行猶予(保護観察が付されない)であるが,比較法的には珍しい(樋口論文)。懲役刑と執行猶予との対応関係(懲役1年6月,執行猶予3年など)の疑問があり,読んだもの。
<死刑>
・原田國男「わが国の死刑適用基準について」法学研究86巻6号21頁
最高裁が,死刑か無期懲役かの基準として,昭和58年にいわゆる永山基準を打ち出しているところ,その中身について論じたもの。
・原田國男「裁判員裁判における死刑判決の検討」慶應法学22号93頁
平成21年以降,死刑判決を下す場合には,裁判員裁判である必要がある(暴力団同士の抗争など除外決定されたものを除き)。裁判員裁判が始まった頃のものを検討したもの(論文の公刊は,平成24年)。
・樋口亮介「不遇な生育歴と責任非難」慶應法学40号177頁
量刑判断に関して,加害者側の事情も見るべきであると論じたもの。被害者側は,刑訴法上,意見陳述権の規定があり,参酌することが可能ではあるが(最近でも,池袋の交通事故でも,被害者遺族が陳述している),加害者側の事情は考慮すべきであるとして,アメリカ法と比較したもの。
成人事件と比べて,少年事件では,特に考慮すべきであるように思う。非行に走ってしまう少年は,不遇な家庭で育っている場合も多く,その少年が悪いと非難したところで,問題は解決しないのではないか。
ほかに,永山事件(最高裁判決と,控訴審の船田判決),平成8年判決(死刑とした控訴審を最高裁が破棄),平成11年判決(無期懲役とした控訴審を最高裁が破棄),光市母子殺害事件(平成18年,24年),上記の平成27年の2判決にも,軽く目を通した。
・江藤祥平「憲法上の刑事手続の復権に向けて」論究ジュリスト36号93頁
憲法学者の立場から(江藤先生は,LS修了後,修習行って,弁護士を1年ほどしてから,憲法学者に),刑事手続,特に裁判員裁判や死刑判決の量刑判断について論じている。
アメリカ憲法では,capital punishment(死刑)の問題が論じられることが多く,日本でも憲法学者が考える必要があるように思っている。手続の問題の多くは,刑訴法の問題であって,わざわざ憲法学で論じなくてもよいだろう。しかし,憲法にも,刑事手続の規定が,31~40条と10か条もあるように,論じなくていいわけではないし,憲法学が論じるべきであるものもあるように感じている。