74期の二回試験
74期の二回試験の出題内容,アドバイス,参考となるブログ等を紹介しておこうと思う。
B班の人たちは,集合修習期間中,5科目×2回の即日起案が各配属庁(裁判所の会議室など)で実施される以外,オンラインだったため,二回試験が最初で最後のいずみ寮生活であった。なお,A班の関東の一部の人は,即日起案が司法研修所であり,A班の関西の人は,二回試験も大阪で実施されるので,司法研修所に行くことはなかったらしい。
<二回試験>
・9時45分着席完了(これ以降は,トイレに行く場合であっても,試験監督員の許可なく退出不可)
・10時20分試験開始
ただし,12~13時が昼食時間(この時間も起案は可能,お菓子などは昼食時間以外でも飲食可)
13時30分から17時30分までは,紐をもらって途中退出可能
・17時45分起案終了
紐綴り込み時間が5分間(受験者全員が筆記用具をカバン等にしまったことを確認した後に)
その後,起案,問題文,考試記録,未使用の起案用紙,答案構成用紙等,すべて回収され,新型コロナ対策で階ごとに時差退出。
また,デイリー六法が貸与される(司法試験と異なり,最終日に持って帰ることはできない)
今回は,受験票はなかった(机上のシールに記載,控えをとっておく)
スーツの人もちらほらいたが,割とみんな私服で受験していた
※以下,括弧内は指定枚数,・・・の後は私の起案枚数
①3月23日検察・・・41枚
第1問:終局処分として起訴する場合には,公訴事実,罪名及び罰条・・・1枚
第2問:傷害致死の犯人性検討・犯罪の成否等(正当防衛の検討必須)・・・37枚
第3問:主張関連証拠開示(目安2枚以内)・・・3枚
②3月24日民弁・・・36枚
第2問:立証・保全執行の小問(15問)・・・2枚
第3問:和解条項穴埋め(6問)・・・1枚
第4問:弁護士倫理2問(各1枚程度)・・・3枚
③3月25日民裁・・・30枚
第1問:訴訟物・個数・併合態様・・・1枚
第2問:主張整理・・・5枚
第3問:主張整理の説明問(3枚以内)・・・3枚
第4問:撤回問(2枚以内)・・・2枚
第5問:事実認定(売買契約の成否)・・・19枚
④3月28日刑弁・・・19枚(なお,17時途中退出)
第1問:想定弁論(窃盗,犯人性)(15枚程度)・・・16枚
第2問:類型証拠開示請求(1枚程度)・・・1枚
第3問:保釈(1枚程度)・・・1枚
第4問:証拠収集(1枚以内)・・・1枚
⑤3月29日刑裁・・・26枚(なお,17時25分途中退出)
第1問:伝聞異議(1~2枚程度)・・・3枚
第2問:事実認定(大麻取締法違反の所持の事実,覚醒剤取締法違反の営利目的所持の事実)(15枚程度)・・・23枚
なお,刑裁の~枚程度の指示は,目安らしいので,大きくオーバーしても問題ないらしい(ほかの科目は,常識的な範囲で守るべきである)
<感想,アドバイスなど>
二回試験については,
①集合修習の即日起案・起案講評をしっかり復習すること(できれば,A班・B班両方の情報を集められるとなおよい)
②各教官がおっしゃっていることを守ること
③各科目の起案の型を守って起案すること(研修所起案と思って,実務の起案とは違うと割り切る)
④起案要領をしっかり読むこと(少なくとも2~3回は確認)
が大事だと思う。
民裁
・事実記載例集(要件事実)
・ジレカンの判断枠組みの4類型
民弁
・民法の知識確認(司法試験のときの論証で足りる)
・導入修習で配布されたレジュメ(立証,保全執行,和解,弁護士倫理)
刑裁
・事実認定ガイド
・証拠構造を間違えない(刑事3科目共通)
・勾留,保釈,公判前整理手続,尋問の異議対応など手続関係の確認
検察
・終局処分起案の考え方
・刑法の構成要件の定義の確認(司法試験で使っていたものなどで足りる)
・検察演習問題(ここから小問が出ると思われる)
刑弁
・刑事弁護の手引,導入の想定弁論起案のレジュメ
・被告人に対する誠実義務に反しない
・刑裁と同じく手続関係,証拠収集,証拠意見など(『刑事弁護の基礎知識』は有用といえよう)
※民裁と刑裁は結論どちらでもよいと思う(なぜその結論をとったのかの説明の方が大事(教官もそうおっしゃっていた),特に刑裁は無罪起案すると即死という怪情報が流れているが,個人的には,無罪心証にかかわらず,有罪心証で起案する方が,かえって評価下がるような気がする)
※検察は,不起訴裁定書を書くことはたぶんないと思う
※民弁と刑弁は,結論は決まっているので,依頼者の意向に反しないように説得に理由を説明する
<いずみ寮>
寮の食堂のごはんはまずいとか,食えたものではないとか,ブログやtwitterでよくみるが,そこまでではなかった。ただ,決しておいしいというわけではなく,可もなく不可もなくという感じではある。
とはいっても,二回試験の試験日の前日や当日は,疲れているし,周りにコンビニ(ファミリーマートが2つ,ローソンが1つ)もあるが,時間帯によっては品切れ気味なので,食堂を使うのはありだと思うし,毎日ではないが,夜は使っていた。
寮の部屋には,寝具,小型冷蔵庫(ビジネスホテルにありそうなやつ),電気スタンド,デスク,椅子,本棚が備え付けである。冷蔵庫は,冷凍庫の機能はないが,出力を最大にすると,飲み物など凍るので注意笑
いずみ寮は,A棟とB棟に分かれ,B棟は女性専用棟であり,A棟には,各フロアのランドリー室に洗濯機・乾燥機が10台ずつある(洗剤はなし)。そんなに混んでなかった。ほかに,電気掃除機とアイロン・アイロン台がある。
共用として,冷蔵庫(一般家庭にあるようなやつ)とオーブントースター,電子レンジがある。
リネン室には,枕カバー,シーツ,掛け布団カバー,足ふきマットなどがある(交換可能)。
シャンプー類,ティッシュ,トイレットペーパーなど,ビジネスホテルにありそうなものは当然ないので,持参するか,近くのスーパー(ベルクとヤオコー)で購入するかです。
個人的にもっていた方がいいものは,部屋が異様に乾燥するので加湿器と延長コードだと思う。
荷物は,事前に送ることができ,また,退寮日の前日・当日には,日本郵便・ヤマト運輸の集荷受付がある。
<紹介>
二回試験対策
71~73期の出題内容?
選択型実務修習
選択型実務修習では,以下のプログラムをとった以外は,ホームグラウンド修習で,弁護修習の続きをした。
・民事模擬裁判
修習生が,裁判官,原告代理人,被告代理人,本人,証人に分かれて,訴状起案から判決起案まで一通り行うもの。
私は,裁判官役であったが,訴状審査,当事者双方から提出された準備書面を検討し,争点整理を行ったうえで,尋問にのぞみ,判決を起案した。
・講義
検察庁において,精神医学や,法医学などに関する講義を受講した。
・刑事関連施設見学
刑務所,科捜研,海保などに見学に行った。
・刑事裁判修習
第1クールが刑裁修習であったが,時間が経って,記憶から薄れていたため,このプログラムをとった。
検察修習
検察修習は,事前検討メモを中心に各種書面の作成,指導係検事への相談,検事正・次席検事への事前方針説明,決裁,そして,一番の中心である取調べや電話聴取に時間を取られ,ほとんど読んでいない。
修習生には,窃盗事件(万引き,置き引きなど)が配点されることが多く,窃盗と占有離脱物横領の区別,不法領得の意思等の検討をするにあたり,コンメンタールや有名な事件の調査官解説(ポシェット事例)をはじめとしたものを読んだ。ほかには,ゴミを捨てた,燃やした等で,廃棄物処理法違反や,軽犯罪法違反で送致されてきた事件も割とあったが,この辺は,検察庁内にある書庫や,修習生室内にある本を見れば,なんとかなると思う。
個人的な感想としては,検察修習では,本を読むことや起案というより,取調べに注力すべきだと思う。
民裁修習
民裁修習では,記録検討,4本の起案を作成する時間に多くをあてたたため,そこまで読んだわけではない。
もっとも,問研起案・集合修習・二回試験で問われがちな二段の推定や,事実認定に関するものは読んだ。
・森宏司「私文書の真正の推定とその動揺」判例タイムズ563号26頁
・森鍵一「私文書の真正の推定」判例タイムズ1385頁51頁
・高島義行「二段の推定とその動揺」判例タイムズ1421号5頁
・信濃孝一「印影と私文書の真正の推定」判例時報1242号12頁
・榎本光宏「契約書の実質的証拠力についてー処分証書とはー」判例タイムズ1410号26頁
ほかは,記録検討・起案をするにあたり,わからないことがあれば,裁判官室や地裁の書庫にある本を探して読んだと思う。
交通事故訴訟と不貞慰謝料請求訴訟が割と多かったが,交通事故訴訟については,弁護修習の記事に譲り,不貞慰謝料請求訴訟は,以下のものを見たような記憶である。
・安西二郎「不貞慰謝料請求事件に関する実務上の諸問題」判例タイムズ1278号45頁
・中里和伸『判例による不貞慰謝料請求の実務 最新判例編1』(LABO)
飲食店への要請~営業の自由等の観点から~
飲食店に対して,政府は,感染拡大防止のため,様々な要請を行ってきたが,問題が多いように思う。
・酒類提供停止の要請
京都大学の曽我部真裕教授も指摘されているように,特措法の政令で,特措法に基づき,まん延防止等重点措置が適用された場合,都道府県知事が酒類提供を停止できるとしているが,特措法の委任の範囲を超えているように思う。
政府関係者は,バーや居酒屋も,酒類を提供しなくとも,ソフトドリンクや軽食を提供して営業できる以上,営業の自由を侵害しないなどと言っているが,酒類を提供することがバーや居酒屋の営業の中心にあるのであって,言いがかりのように感じる。
酒類提供を停止させたいなら,正面から特措法を改正して,行うべきであったと思う。もちろん,立法によっても,居酒屋等に酒類提供させないことで,感染拡大防止に資するか,すなわち,立法事実があるか疑問ではあるが,特措法の政令で行うよりはましではある。
・グルメサイトを使った評価
グルメサイト(食べログなど)で,客に評価してもらう仕組みを導入しようとしているが,グルメサイトは,コロナの前から中傷的なコメントを投稿する人はおり,意味をなさないように思えてほかならない。
・酒類提供の飲食店との取引中止要請
政府は,緊急事態宣言(東京都を対象とするものは2020年4~5月,2021年1~3月,4~6月に引き続き,7月~8月の4度目)の対象地域に関して,酒屋などの販売事業者に対し,酒類提供停止要請に従わない酒類を提供する飲食店との取引を中止するよう,要請する意向である。
もはや要請の名を使って,やりたい放題としか言いようがない。
時短要請や休業要請といった政府がこれまで行ってきたコロナ対策は,営業の自由を制限することにつながるが,立法事実があって行うのであれば,基本的に問題はない。しかし,政府は,なんとなく感染拡大させてそう,飲食店に対して要請すれば,国民に対して外出を自粛してもらう効果がありそうといった,漠然とした根拠で行っているように思える。実際,対策をしているような百貨店に対しても,休業を要請していたこともあり,人々によって魅力ある場所を閉めれば,人々が外出しないであろうという効果を狙っている(分科会の尾身会長が,NHKの日曜討論でこのような趣旨の発言をされていた。)。
営業の自由を制限するならば,特措法の政令に基づいて行うのではなく,立法で行うべきであり,これは法律の留保原則からもそのように言えると思う(まさに,侵害留保説が妥当する場面であるし)。
また,営業の自由を制限するならば,要請ではなく命令で行い,協力金ではなく,補償という形で行うことも必要になるであろう。憲法29条3項の損失補償にはあたらないかもしれず(判例通説の,消極的・警察的規制であれば補償は不要という考え方),義務的補償をしなければならないとはいえなくても,多くの事業者に協力してもらうためには,政策的補償としては要求されるのではないか。
さらに,飲食店以外にも,百貨店や映画館,美術館などにも休業を要請していた(スクリーンだけの映画館が駄目で,演者のいる小劇場がOKな理由はよくわからないが)。飲食店のように,マスクを外したり,マスクを外して会話したりしないであろう,百貨店などは,感染拡大の根拠が乏しく,外出自粛を狙ったものであるといえよう。個別に時短・休業要請するぐらいなら,欧米諸国のように,正面から外出禁止命令を出すことができるよう,移動の自由等の問題はあるが,法改正によるべきではないか。
この1年以上の日本のコロナ対応は,命令ではなく,要請によってきた。しかし,要請は,あくまでお願いであって,従うか従わないかは,各人・各事業者の(自由な)判断によるものであり,強制することはできないはずである。それが,日本特有の同調圧力等から,要請に従わない人はいけないと,脅迫文まがいの貼り紙が貼られたり,抗議の電話がされたりしていた(店内飲食自粛の要請に応えて,要請外のテイクアウトだけの営業をしている飲食店にも,被害に遭うケースが散見される)。要請や,行政指導といったお願いベースの政策による限界が来ているのではないか。
最後に,2020年の春先は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の猛威がどの程度のものかわからず,感染症によって,人々の生命・身体・健康を害するものであるから,少々やりすぎと思える政策や手段によっても,緊急性から正当化しえた。憲法上の予防原則が妥当する場面である(平成28年司法試験(性犯罪者に対してGPS装置を埋め込むことの合憲性が問われた問題)は,性犯罪者が再犯におよび,被害が生じることを予防できるか,予防原則が妥当するか検討させるものであったが,コロナは予防原則が妥当するといってよい)。
去年に比べれば,何が効果のある対策かも考えられるようになり,欧米諸国と比べて遅れていたワクチン接種も普及してきた現在,緊急性だけで何もかも正当化されるとはいえない。
長々書いてきたが,この投稿は,コロナが終息したころには,上記の問題のほかに,政府は,緊急事態宣言の発令や解除など,専門家の判断をどこまで尊重すべきかといった問題など,憲法学,政治学といった観点からも,あらゆる問題が振り返られると思うが,2020年春から何が行われたか記憶に残しておくための雑感である。
国家公務員法改正
令和3年6月16日,改正国家公務員法が公布された。
今回の改正は,強制労働廃止条約締結に向けて,国家公務員がストライキ等に参加したときの罰則を懲役刑から禁錮刑にするために行われたものである。
なお,国家公務員法は,昨年,当時の黒川弘務東京高等検察庁検事長の定年延長問題により,定年を65歳に引き上げる旨の法案が廃案とされたが,令和3年の通常国会で成立し,改正されている。
政治的行為をした場合に,国家公務員は処罰されてきた(猿払事件,堀越事件,宇治橋事件)。
また,ストライキも,処罰されてきた(第1期:政令201号事件,国鉄檜山丸事件,和歌山県教組事件,第2期:全司法仙台事件,全逓東京中郵事件,東京都教組事件,第3期:全農林警職法事件,全逓名古屋中郵事件,岩手県教組学テ事件)。
国家公務員が,政治的行為をした場合には,国家公務員法102条1項,人事院規則14-7に違反したとして,同法110条1項19号により,3年以下の懲役または100万円以下の罰金を科すとされている。
また,国家公務員が,争議行為をそそのかしたり,あおったりした場合には,国家公務員法98条2項前段に違反したとして,同法110条1項17号により,同様の刑罰を科すとされている。
令和3年の通常国会(第204回国会)で,これらの規定を定める国家公務員法等は,「強制労働の廃止に関する条約(第105号)の締結のための関係法律の整備に関する法律案」により改正された。議員立法で改正されている。
日本は,強制労働廃止条約を批准していない。条文は,ILOのホームページに掲載されている(1957年の強制労働廃止条約(第105号))。
厚労省によれば,国家公務員法等の国内法制と整合性の面から批准することが困難であるため,G7の中で唯一批准してこなかった(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/04/dl/s0418-6e.pdf)。
強制労働廃止条約1条の強制労働に該当するおそれがある,法律で定められている刑罰が懲役刑となっているものが,禁錮刑に改められた(法律案要綱,https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/housei/pdf/204hou23youkou.pdf/$File/204hou23youkou.pdf)。法律案では,国家公務員法以外にも,地方公務員法等もあわせて改正されている。
国家公務員法の場合,これまでの同法110条1項17,19号の規定が削除され,同法111条の2第1,2号と改正されている(法律案新旧,https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/housei/pdf/204hou23sinkyu.pdf/$File/204hou23sinkyu.pdf)。